AI個別技術と関連理論 14・データベース2

リレーショナルデータベースで具体的に何ができるのか、簡単な例を挙げて見ていきます。

 

販売促進につながるデータを抽出する

前の記事で例として示した「巨大ネット通販サイト・ToneRiva (トネリバ)」の顧客情報データベースの活用を考えます。まず、基本の顧客データは以下。

 


ここにさらに、以下のような販売記録データがあったとします。巨大ネット通販サイトですから、クレジットカード決済時などに自動的に記録されるデータです。


というわけで、このデータベースにはふたつのデータ群があります。上の顧客情報データベースと下の販売記録データとで共通するのは、「顧客番号」ですね。したがって、この顧客番号でふたつのデータ群を結びつけることができます。

ここでは、「顧客が何を購入したかのリストを、顧客番号の代わりに顧客氏名にひも付けして出力する」というクエリを与えてみます。すると、下のようなテーブルが出力されるでしょう。


柿食敬子さんと菜煮ヌーネノさんは購入商品すべてを書ききれていませんが、テーブルは本当はもっと右に続いていて、すべて書き込まれていると考えてください。

また、ここではふたつのテーブルを関連付けて3つ目のテーブルを出力させていますが、現実の似たようなデータベースでは、テーブル数はもっと多いでしょう。個々の商品についてジャンルや定価、パッケージの種類など、細かい属性がさまざまにありますから、そうした属性も整理した別のテーブルも整えられていることでしょう。

 

販促メールを送るためのデータを出す

いずれにせよ、上のようなテーブルが示されれば、ひとりひとりの顧客がどんなものを買っているか、よくわかるようになります。愛鵜英男さんは酒とおつまみを愛する人のようです。柿食敬子さんはフレンチの食とファッションが好きな人です。刺州清三さんは……ちょっと危ない人かもしれません。菜煮ヌーネノさんは、どこの国の人かわかりませんが、地元グルメにはまっているようです。

このように顧客の好みがわかれば、販売促進のため、嗜好に合わせた商品情報を顧客に流すことができるようになります。では、そのために「顧客名+メールアドレス+商品ジャンル」と関連付けたテーブルの出力を命じるクエリを与えます。そうすると、以下のようなテーブルが得られるでしょう。


こうして得られたデータを、別途用意したプログラムを使ってメールのテンプレートに流し込んでやれば、自動的に販促メールが作成され、送信されます。そうすると、ToneRiva、がっつり儲かります。

 

このようなデータベースによるデータ活用は、ずっと前からあるリレーショナルデータベースの技術ですから、ほんの少しも人工知能技術ではありません。しかし、Amazonやジャパネットたかたなど、実在するネット通販業者が行っている人工知能技術を応用した販売状況分析も、上述のようなデータベーステクノロジーが基礎になっています。

 

SQLからNoSQLへ

最近は、たとえば小売店舗などへの顧客の来店状況はスマートフォンなどのモバイル端末を利用すればリアルタイムに把握できます。さらには、商品や陳列棚にセンサーやICタグを付けておけば、どの商品をどのようなタイミングで顧客が手にしたかという、買わなかったとしても買ったかもしれなかった顧客の行動まで認識できます(アイライン追跡)。また、ネット通販サイトならば、サイト上のどの商品が検索されているか、モバイル端末の画面ではどの表示を拡大して見ているのかなどの細かなデータも、いまや簡単に収集できるようになっています。

言い換えれば、モバイル端末やセンサーなどを用いると、これまで以上に、あらゆるところで顧客と企業がつながるわけです。また、顧客と企業の接点では、両者の関係を表すさまざまなデータをリアルタイムに収集できます。つまり、入力源が多様化するとともに、データ量も爆発的に増大しています。

ビッグデータの時代です。

こうなりますと、従来のリレーショナルデータベースではかえって効率が悪くなります。テーブルの数も、レコード、フィールドの数も膨大になり、検索や串刺しデータ抽出、顧客動向によるデータ更新にも膨大な時間がかかるようになるのです。

そのため、最近の動向としてはSQLに代わりNoSQLという新しいデータベース管理システムが主流になりつつあります。

次の記事で、その新しい動向についてまとめていきます。