AI・人工知能について 17・ビッグデータ 2

データマイニングによるビッグデータの活用・2

引き続き、データマイニングの活用事例を取り上げていきます。

 

続・データマイニングで掘り出されるもの

コールセンター・「お客様の声は宝の山」

音声認識は畳み込み多層ニューラルネットワークの得意とするところです。そして機械学習の実現により、以前は手間暇のかかった音声データのライブラリ化も高度に自動化されるようになりました。日本語のむずかしさという問題もあり、まだまだ複雑度の高い発言に的確に反応するのはむずかしい状況ですが、よくある問い合わせや要望に対してであれば、かなりの程度オペレーターをマシンが支援できるようになっています。

あるガス会社では、過去の数百万件にもおよぶガス器具の修理履歴や機器・部品の型番データをベースに、コールセンターに寄せられる問い合わせや修理依頼のデータも重ね合わせて分析し、ケースごとに必要となる部品を自動的に割り出すなど、修理作業員にかかる手間暇を軽減する支援を可能にしています。こうした修理サービスの業界では人件費のウェイトが大きいため、ビッグデータの活用は高い効果を上げています。

 

観光資源の有効活用法の発見

関西のある温泉地は、湯治客が7カ所の外湯を自由に行き来できる点を特徴としています。そこでは携帯電話やスマートフォンのICカード機能を利用してデジタルマネーを発行し、その利用状況から各外湯や店舗の活性化につながる情報の採掘を試みました。

デジタルマネーの利用状況データは、家族・親子連れ、三世代連れ、男女カップルなどの湯治客種別はもちろん、それら人々の流れや外湯・店舗での出費もすべて記録したビッグデータになります。

そこからのデータマイニングにより、花火など観光客が立ち止まって楽しむイベントよりも、灯籠流しなどのように観光客が街を歩くイベントの方が店舗の売上増に貢献できることなど、新たな発見がありました。このように、観光資源の効用最大化につながる知見も得られます。

 

タクシーの顧客ピックアップ効率アップ

NTTドコモは、タクシー会社向けに「AIタクシー」という、人工知能を使って未来のタクシー需要を予測し情報配信するサービスを提供しています。自社のユーザーが持つ携帯電話やスマートフォンのGPS機能を通じてリアルタイムにモバイル人口の動態統計をとり、気象データや施設データ、イベント情報、ほかの交通機関の運行状況(運休・遅延)など多元的データを総合し、AIによるタクシー需要の予測を行い、タクシー会社に提供するというサービスです。

一台一台のタクシーに近くのエリアで予測されるタクシー待ちの人数が表示され、ドライバーはその人数の多いエリアに向かえば効率的に乗客を拾えます。ベテランドライバーの「勘」に頼らなくてもよいので、新人でも不安なく働くことができるようになりました。

 

AIで犯罪防止

アメリカはカリフォルニア州のオークランドは全米でも屈指の犯罪都市。同市は、ビッグデータを活用して市民や観光客が犯罪に巻き込まれないようにするためのシステムを作っています。殺人、強盗など犯罪の種類別、日にち別、時間帯別、場所別に色分けして危険度が表示されるため、利用者はその情報を危険回避のために利用することができます。

犯罪発生は「場所」にもっとも強く依存することが知られていますが、オークランドのシステムでは時間その他のデータも串刺し処理してリアルタイムに危険度を診断しています。

 

eコマース・ランキングと顧客指向リコメンドで売上アップ

前回の記事で触れたビデオ・CDレンタルサービスと同様ですが、一部をサンプリングする統計学的手法ではなくビッグデータを活用することで、eコマースサイトも個別の顧客にきめ細かく対応することで売上アップをはかっています。具体的には、より個別的にリコメンドを示せるように商品のジャンル分けを細分化し、ジャンルごとの人気ランキングも更新頻度を上げます。すると、ニッチな嗜好の人ほど似たような感性の持ち主たちの動向に敏感になり、消費行動を刺激されることになり、売上も上がるわけです。

 

ホームセンター・従業員の配置を工夫して売上15%アップ

あるホームセンターでは、商品の陳列データと売上データ、従業員の行動データを蓄積してビッグデータとして解析したところ、顧客単価の高いセクターが特定されました。そのセクターに従業員を重点的に配置したところ、売上が15%アップしたということです。

このように、ビッグデータは経営資源の効率的活用にも役立ちます。

 

雑談で売上アップ?!・コールセンター

「士気」というものでしょうか。あるいは職場の活気。

受注率の高いコールセンターと受注率の低いコールセンターとについて、従業員にセンサーを付けて行動を比較したところ、受注率の高いコールセンターの方が休憩時間中の活動が活発であることがわかりました。主に雑談なのでした。

そこで、休憩中にスーパーバイザーが従業員ひとりひとりに声をかけて雑談を盛り上げるようにすると、コールセンターの売上は1年で27%も増加しました。

働く人の「幸福感」と業績との間に相関関係があることが発見されました。